カモンっ!チェルモン!

最近、ライブロックの苔が異様に繁殖し、苔と言っても、生えているというより、ふわっとのっているような苔で、歯ブラシで軽くブラッシングするだけでするっと落ちるのですが、すぐに復活してしまうのです。その見た目の汚いことと言ったらもう。。。

重い腰を上げてリセットしましたが、サンプを掃除してびっくり!底にヘドロ状のものが溜まって、硫黄臭がしました。サンプの底に何か汚泥のようなものが溜まっているのは分かっていたのですが、すっかり無害化されているものと思い込んでいました。というか、むしろこれが脱窒みたいな感じで浄化の役に立ってるんじゃないかな?くらいの甘い考えで。。。これからは月一くらいでサンプ掃除をしようと反省しました。

 

リセット後に生麦海水魚センターに行ってみると、チェルモン(ハシナガチョウチョウウオ)に目がとまりました。軽~い気持ちで「この子、ちょっと餌やってもらっても良いですか?」とお願いしてみると、なんとクリルを猛烈に追います。呑み込んだのは確認できませんでしたが、明らかにクリルを突いています。

 

チェルモンは、以下の画像からも分かるように、各国の切手にも採用されるほどの、まさにこれぞ海水魚!という、美しく、愛らしいお魚なわけです。

https://www.google.com/search?q=chelmon+stamp&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwjzvqPw8a7kAhWHA4gKHYuXDsAQ_AUIEigC&biw=1368&bih=770

海外では、コッパーバンド・バタフライ(Copperband butterfly)として知られていますが、縦に入る銅色のバンドと白銀の体表がとても綺麗です。その形と色の綺麗さから、飼ってみたい!だけど餌付け難易度特級レベルで手出しができない、という人も多いのではないでしょうか?

自分もその一人で、何度ショップに足を運んでも、餌を食わないばかりか、無反応な子ばかりにしか出会えず、購入を躊躇していました。自分の感覚では、アサリやブラインに無反応なのは、相当な重症だと思うのですが、たびたびショップで餌を巻いてもらっても、冷ブラやアサリにすら無反応であることも少なくありません。値段も比較的廉価ですが、たかがチェルモン、されどチェルモンという、なかなかレベルの高いお魚さんなんじゃないかと思うんですね。。。

 

チェルモンの親戚のマージンドコーラルフィッシュは以前から飼育して、おっとりした性格やキレイさで気に入っていたのですが、全身ストライプの華やかなチェルモンは、また違ったキレイさで、いつかは飼ってみたい魚のトップリストに入っていました。こんなにキレイでミドリイシを突かないなんて最高です。

 

というわけで、クリルを追うチェルモンを思わずガン見。シマヤッコを選定するときもそうでしたが、見込みが薄い子はボーっとしていて生気がないのです。ハシナガチョウは詳しくないですが、今まで見た子たちも、やはり、ほとんど全部といって良いほど餌に無反応、無関心な子たちだっただけに、これは驚きでした。聞けば入店2週間とのこと。いつから追うようになったかは分かりませんが、この子が2週間誰からも買われなかったのは超ラッキーと言うほかありません。

 

というわけで、衝撃的にお持ち帰りとなりました。やはり、マージンドコーラルフィッシュ同様、ミドリイシには一切タッチしません。

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(↑猛烈に給餌しているせいで、砂も岩もひどいことになってます。ただ、カンギクガイが歩いた岩は、ごっそり白くなってます)

さっそくアサリを与えてみると、力は弱いものの、ちゃんと突きます。が、チョビチョビやっている間にマージンドコーラルフィッシュが来てガブっと持って行ってしまいます。翌日、クリルをやってみると、やはり生麦さんの水槽で見たときと同じようによく追うし、食べました。ですが、口が小さいこともあり、食べた量は十分とは言えない感じでした。

 

さて、自宅にて餌付けを試し、一週間が経過しました。今のところはこんな感じです。

活きイトメ ◎◎◎

活きアサリ ◎

冷凍アサリ ◎

冷凍アサリミンチを殻に塗ったもの ◎◎

クリル◎

冷凍アサリ+人工餌のハンバーグを殻に塗ったもの 〇

上記の人工餌の比率を多くしたもの △

人工餌のハンバーグを殻に塗ったもの X

冷凍アサリ餌+人工餌のハンバーグ(殻なし) 〇

上記の人工餌の比率を多くしたもの X

 

というわけで、イトメへの食いつき方はパンパなく、これがあれば、とりあえず餓死はない、といった印象です。活きアサリ、冷凍アサリは、何しろ口が小さいので、細かくミンチにしてあげて殻に塗った方が食べやすそうです。

 

嬉しいのは、最初はあまり関心がなかった人工餌の比率をやや多めにしたハンバーグを、しっかりと食べはしないものの、いたずら的に突くようにはなってきていることです。ペッと出してしまうことも多いのですが、最初はそれで十分です。そうやって口にさえ入れてくれたら、徐々に人工餌の味や食感に慣れて行ってくれるので。ハシナガチョウは初めてですが、シマヤッコの経験から言って、とにかく口に何かを入れてくれる子は最高です。いずれは食べるようになってくれる確率は大だと思います。

ただし痩せているので、それだけが心配です。食欲旺盛なのは救いですが、餌付けが長引いて力尽きてしまうことがないよう、何でも良いので食べるものはガンガン食べさせておかないと厳しいのかな?と思います。餌付け特有の、意図的に腹を空かさせて人工餌を食べさせる戦略を使うと、ガリ痩せして死んでしまうんじゃないかと心配になります。

 

そんなわけで、パンパない量の餌を高頻度で投入していますが、リセット直後の水槽には決して良いことではありません。なので、ウォッカ・ドーシングによって栄養塩を無理やり抑え込んでいます。

 

海外ではウォッカ・ドーシングとビネガー・ドーシングは有名で、聞くところによると、NO3PO4Xと同じ原理で、炭素源を投入することでバクテリアを増殖し、栄養塩を下げる方法です。

 

 

 

ウォッカ・ドーシングの方法ですが、まず、市販のウォッカを酒屋さんで買ってきます。小瓶で500円くらいで買えます。最初の3日間は約100Lに対して0.1mlの添加、4~7日は0.2ml、以降、硝酸塩を測りながら栄養塩が希望の数値になるまで、毎週徐々に添加量を増やす、というのが一般的なようです。うちの水量(約300L)だと、まずは0.3mlくらいからの添加になります。まずは、1日1滴をサンプの水流の強い落水位置にポタっとします。ちなみに1滴は0.4mlほどらしいので、規定量の0.3mlよりはちょっと多いですが、問題ない範囲かと思います。

 

この効果がすさまじくて、うちの水槽は、大量給餌開始前は硝酸塩5、リン酸塩0.03程度でしたが、ウォッカ・ドーシングのおかげで、通常の給餌量の5倍以上くらい給餌しているにもかかわらず、現在、硝酸塩2、リン酸塩0で落ち着いています。現在の添加量は総水量約300Lに対して、朝1滴、夜1滴の合計2滴だけです。1滴というのはドーシングポンプで送るには無理なので、スポイトで朝晩、サンプの落水位置にポチャっと落としています。ウォッカよりもビネガー(酢)の方が効果は弱いらしいので、ドーシングポンプを使いたい人はビネガーの方が向いているかも知れません。

 

以前に餌付けの大量給餌によって白点大爆発を経験したことがある自分は、換水量を普段の倍にしながらウォッカ・ドーシングをするなどの対策をしたのですが、ウォッカ・ドーシングがかなり効くので、現在では換水を通常量に戻していますが、それでも栄養塩は低いままです。硝酸塩は5くらい、リン酸塩は0.1以下なら良いかな?くらいに思っているので、まだ余裕があります。

 

このウォッカドーシングは成功者が多数いますが、失敗談もなくはありません。注意点としては、バクテリアの増殖に伴う酸欠を防ぐためにスキマーが必須であること。それと、失敗している人に共通しているのは、開始時の栄養塩が高すぎることです。これらの人達からは、魚の大量死または連続死が報告されています。おそらくは、高栄養塩下でバクテリアが短期に異常繁殖し、酸欠をもたらしたのではないだろうか?と推測されます。

 

同時に、苔対策としてカンギクガイを50個以上投入しました。一度ライブロックが苔だらけになると対策が困難になるので、予防策を張ります。ブレニー、ハギなどを有力候補として考えたのですが、過去に成功事例のあるカンギクガイをチョイスしました。ハギは縄張り意識が強く、入海間もない小さなチェルモンには脅威になりそうなのと、ブレニー系もある程度の仕事はしますが、自分の経験では、そこまでパワフルな印象はありません。カンギクガイは他者に脅威となることがないというところが大きく、その割に仕事は非常にパワフルで、石灰藻ごとゴリゴリ削って行くほどで、歩いた痕が分かるくらい力強い仕事をします。硬い苔もごっそりむしり取って行くので、苔取り職人としての能力は一級品です。

 

苔対策はもう一つ手を打ちます。石灰藻によって、他の苔を駆逐する方法を試します。

 

苔対策として一般に言われるのは、栄養塩を下げる、ということですが、下げ過ぎるのも問題で、緑ゴケが繁殖しない代わりに、生物相の偏りによってダイノスが発生することがあると言われています。なので、カツカツの低栄養塩にするよりかは、多少競合できる苔が発生できる水槽の方が安全なのかな?と考えています。

 

で、色々調べた結果、石灰藻を繁殖させると、その他諸々の見た目の悪い苔に対抗できそうなことが分かってきました。石灰藻が好むのは、ミドリイシなどの骨格のあるサンゴの生育に適した水質と言われるので、KH、Ca、Mgあたりをミドリイシに最適とされるパラメータまで上げ、栄養塩を適度に下げれば繁殖スイッチが入りそうです。

 

現在、うちの水槽はミドリイシの個数が少ないので、しっかり換水していればカルシウムを添加しなくても生存は可能と割り切っていて、特にドーシングなどはしていませんでしたが、パラメータを測ってみると、KH8.3(これはちょうど良いかな?)、Ca 400、Mg 1200と、カルシウムとマグネシウムがちょっと低めなことが分かりました。

というわけで、マグネシウムとカルシウムを、ドーシングポンプで添加し始めました。うちはカルシウムリアクターではなく、ドーシングポンプを使ったボーリング・メソッドなので、個別の添加コントロールが可能です。既にまあまあな数値にあるKHは手を付けません。

 

というわけでドーシングを開始したのですが、朝晩各1mlずつ(カルシウム・マグネシウムとも)添加して1日経過した時点で、KH 10(8から上昇)、Ca 420(400から微増)、Mg 1200(変わらず)となっていました。あれ???KH添加していないのに上がってる。。。

 

自分はあまり詳しくはないのですが、マグネシウムにはバッファー効果(酸性に傾きにくくする効果)があると言われていて、通常はKHを上げるとCaが下がり、Caを上げるとKHが下がるのですが、マグネシウム添加のバッファー効果によって双方をバランスよく上げることができるらしいのです。KH(アルカリ度?炭酸塩硬度?)が上がったのは、マグネシウムによるバッファー効果が働いたためだろうか。。。

 

石灰藻とミドリイシが最も好む値がどのあたりだか分かりませんが、とりあえずは、カルシウムは450前後くらいを目安に調整して行きます。マグネシウムはとりあえず1350くらいを狙って行きますが、必要元素としてではなく、バッファー効果が発揮されれば良いので、こちらはあまり数値にはこだわらずにやっていきます。KHは現在使っているアラゴナイトの底砂に既にバッファー効果があるらしいので、そこにMgが添加され、さらにアルカリ度が上がったのかも知れません。こちらは下げる調整方法はなさそうなので放置します。7~15くらいまでは、たぶん問題ないんじゃないかな~?と思ってます。。。どうしても下げたい場合は、照明を強くすればKHが消費されるので、状況次第で、それも考えます。

 

さて、添加してたった一日で、うっそ~ん?と思う方もいるかも知れませんが、KH、Ca、Mgのバランスが若干ミドリイシに適したパラメータに近づいただけで、ミドリイシの肌の具合がとっても良いです。自分でも驚きですが、この一日で肌の表面がトゥルンとして、モッチリした感じになりました。色も濃くなってる気がします。それは魚への給餌量が多くて、栄養塩が適切になったからじゃないの?と思う人もいるかも知れませんが、違います。うちでは栄養塩がもっと高くて、硝酸塩が5~10、リン酸塩が0.1~0.3くらいあった時期がありましたが、その時期のミドリイシは決して調子良くはなく、特に共肉の厚み、艶などは、てんでダメダメだったのです。なので、栄養塩だけでは、こうはなりません。

 

よくミドリイシには光が重要と言われますが、光だけでミドリイシを健康にしようとするのは、とっても危険じゃないかと思います。今回の変化で思うのは、光よりもパラメータが重要で、パラメータが合うことで健康な状態になって初めて、光に耐えられる個体になって、そして輝くことができるのであって、パラメータが合っていないのに光を強くすると、強光阻害で焼けたり、決してパステルとは言えない、変な色の褪せ方をしたミドリイシになっちゃうのかな?と思います。ミドリイシの色が薄いのに決してパステルではない場合、艶がない場合、共肉がムチムチしていない場合は、必要元素のパラメータが合っていないか、栄養塩が低すぎることを疑ってみると良いかも知れません。私のようなペーペーが語っちゃうのもオイオイって言われちゃいそうですが、アミノ系添加剤とかに頼らなくても、必要元素のパラメータと適度な栄養塩で、ムッチリした健康なミドリイシになるのかも!と思ったりしています。

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本当はビフォーアフターの写真があれば良いのですが、変化前の写真がありません。上級者から見たら別に、、、という色艶でしょうけど、自分にしてみたら、突然、色濃く、ムッチリと共肉が厚くなった感じで、すごく驚きました。

 

さて、図らずも、チェルモンの導入と苔対策によってミドリイシにも復調の兆しが見え始めました。ただ、色々な変化がやや急すぎる感じもあるので、注意しながら取り組みたいです。自分にとっての今回のチェルモンは超レア個体なので、何としてでも肉付きが良くなるくらいまで持っていきたいです。